保育園で働く保育士にとって、感染症対策は重要な課題です。特に免疫力が未熟な子どもたちは、さまざまな感染症にかかりやすいため、しっかりとした対策が求められます。
新人保育士や開設間もない保育園では、感染症対策に対する不安があるかもしれません。この記事では、保育園の元園長・あくあが、保育園でできる具体的な感染症対策について詳しく解説します。
保育園で感染症が広がりやすい理由
多くの人が集まる環境では感染症が広まりやすく、保育園もその例外ではありません。保育園特有の理由も含め、いくつかの要因が感染拡大に影響しています。
- 物理的な距離を取るのが難しい:保育園では、子どもたちが密集して活動することが多く、距離を保つのが難しいです。
- 長時間同じ部屋で過ごす:子どもたちは一日の大半を同じ空間で過ごすため、感染のリスクが高まります。
- おもちゃの共有:多くの子どもたちが同じおもちゃを使うため、接触感染のリスクが高いです。
- おもちゃを口に入れる:幼児はおもちゃを口に入れる習慣があるため、口からの感染が起こりやすいです。
- 手洗いやうがいが難しい:子どもたちは自分で予防策を徹底するのが難しく、保育士のサポートが必要です。
- 免疫力が未熟:子どもたちは免疫力が発達途中であるため、感染症に対する抵抗力が弱いです。
これらの要因から、保育園では子どもたちに合わせた工夫が必要となります。
子どもがかかりやすい感染症
子どもたちがかかりやすい感染症には、流行しやすい時期があります。保育士はこれらの感染症に対する予防策を知り、特に流行時期には注意を払うことが大切です。
春(3月~)に流行しやすい感染症:
- 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ):耳の前方に腫れと痛みが生じます。飛沫感染や接触感染で広がり、登園基準は耳下腺の腫れが消えていることです。
- 風しん:発熱や発疹、リンパ節の腫れが見られ、飛沫感染や接触感染で広がります。発疹が消えていることが登園基準です。
- 麻しん:発熱や目の充血、発疹が特徴で、飛沫感染、接触感染、空気感染で広がります。解熱後3日を経過していることが登園基準です。
夏(6月~)に流行しやすい感染症:
- ヘルパンギーナ:発熱と喉の痛みがあり、口内に水疱ができます。経口感染や飛沫感染で広がり、普段の食事がとれることが登園基準です。
- 手足口病:発熱とともに、口内や手足に水疱ができます。経口感染や飛沫感染で広がり、普段の食事がとれることが登園基準です。
- 咽頭結膜熱(プール熱):発熱、喉の痛み、結膜炎が見られます。接触感染や飛沫感染で広がり、主な症状がなくなってから2日経過していることが登園基準です。
秋(9月~)に流行しやすい感染症:
- 感染性胃腸炎(ノロウイルス):嘔吐や下痢が主な症状で、経口感染や飛沫感染で広がります。嘔吐や下痢の症状が治まり、普段の食事がとれることが登園基準です。
冬(12月~)に流行しやすい感染症:
- インフルエンザ:高熱や全身の倦怠感、呼吸器症状が見られます。飛沫感染や接触感染で広がり、発症後5日経過し、解熱後2日を経過していることが登園基準です。
- 溶連菌感染症:発熱や喉の痛み、発疹が見られます。飛沫感染や接触感染で広がり、抗菌薬内服後24~48時間経過していることが登園基準です。
- みずぼうそう:発熱と発疹が特徴で、空気感染や飛沫感染で広がります。すべての発疹がかさぶた化していることが登園基準です。
保育園での感染予防対策
保育園では、感染経路に合わせた予防対策を行うことが重要です。以下に感染経路別の対策を紹介します。
飛沫感染への予防対策:
- マスクの着用:子どもたちにマスクの着用を促すとともに、保育士も常にマスクを着用します。
空気感染への予防対策:
- 小まめな換気:部屋の空気を頻繁に入れ替えることで、感染リスクを低減します。
- 隔離:感染が疑われる場合は、すぐに隔離し、他の子どもたちへの感染を防ぎます。
接触感染への予防対策:
- タオルや食器の共有を避ける:個別のタオルや食器を使用することで、接触感染を防ぎます。
- 固形せっけんを液体せっけんに変更:せっけんを共有することによる感染を防ぐため、液体せっけんやセンサー式のせっけんを使用します。
- 傷の適切な処置:傷がむき出しにならないよう、適切に処置し、感染リスクを軽減します。
経口感染への予防対策:
- 食材の温度管理や熱処理:食材を適切に管理し、十分に加熱することで、経口感染を防ぎます。
子どもと一緒にできる感染症対策
保育士が行う対策に加えて、子ども自身ができる予防策も伝えることで、効果を高めることができます。
手洗いうがい:
手洗いやうがいの習慣を身につけるために、国や自治体が提供するポスターや動画を活用しましょう。指の間や手首など、見逃しがちな部分もしっかり洗えるように指導します。
マスクの着用:
子どもたちにマスクの重要性を説明し、適切な着用方法を教えます。絵や図を使って視覚的に伝えることで、理解を深めやすくなります。また、子どもたちが好むデザインのマスクを用意することで、積極的に着用するよう促します。
保育士が日々の業務で意識できる感染症対策
保育士自身も健康管理に気を配ることが大切です。自分自身が健康でいることで、子どもたちに対しても万全の体制で接することができます。
- 生活習慣を整える:規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠を取ることで免疫力を高めます。
- 検温やマスクの使用:毎日の体温チェックやマスクの着用を徹底します。
- 爪を短く整え、清潔に保つ:手指の清潔を保つために、爪を短く切り、手洗いを徹底します。
体調を崩した場合は、早めに職場に相談し、無理をせずに休むことが重要です。
まとめ
保育園での感染症予防は、保育士の重要な業務の一つです。具体的な予防策を実践し、子どもたちの健康を守りましょう。保育園ごとに決まりがある場合が多いので、事前に確認しておくことをお勧めします。
現在、保育園で働いている方は、感染症の流行時期に備えて自分ができる対策を見つけ、積極的に取り組んでください。また、転職を考えている方は、感染症対策がどれだけ充実しているかをチェックすることも大切です。感染症対策の視点を持つことで、安心して働ける職場を見つける手助けになるでしょう。
元保育園園長&保育士のあくあです|保育士10年→転職して園長に|プロの視点で、子育てのヒント、保育業界の裏話、保育士の転職アドバイスをシェア|質問・相談、面接練習、フォロー大歓迎!
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